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2012年09月23日

「世論の曲解」

世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか (光文社新書) [新書] / 菅原 琢 (著); 光文社 (刊)

・サブタイトルにもあるように、小泉内閣の後の自民党が負けた理由をデータに基づき解説されている。

・小泉政権の施策が都市部寄り、若年・中年層向けに政策をシフトさせるという的確な対処だったのに、そこに自民党の選挙での苦戦、大敗との間には明確な因果関係がないにもかかわらず、農村を破壊した、地方を衰退させた、自民党を窮地に追い込んだと、自民党の政治家たちは有権者の評価の中身を大きく誤解した。

・その後の安倍政権で自民党の支持者が離れていったのは、「小泉政権の負の遺産」でもなんでもなく、安倍総理がイデオロギーにこだわりすぎていることや、郵政造反組の早々の復党させたことが主な要因で、この度の自民党総裁の選挙に立候補している人たちは当の安倍元総理含めて、そこらへんのところを理解できてるのかなと。

・麻生総理の人気は@若者、ネット、秋葉原、あるいは街頭演説の会場というような限定を付したのものA産経新聞を中心とする産経グループの「ヨイショ報道」と限定的で、国民的に人気があったわけではない。それでも麻生が総理候補として押し出されて行った過程は、どれも不味い料理を出す店に入ってしまったが、お腹も空いていることだし仕方なく他のみんなが選んでいるから、と選んだ料理がその店の「人気メニューランキング第1位!」と紹介されることに似ている。

・ネットの見過ぎには気をつけましょう。
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2012年09月09日

「職業としてのAV女優」

職業としてのAV女優 (幻冬舎新書) [新書] / 中村 淳彦 (著); 幻冬舎 (刊)

・現在はAV不況と呼ばれる状況だそうで、昔と違ってアダルトビデオに出たからといって簡単に懐に大金が入るようなことはないようだ。社会全体で「女性のカラダの価値は下がっている」(p54)にもかかわらず、まるで「一般企業に転職するようにAV女優を選んでいる」(p56)、と。

・アダルトビデオに出ることのデメリットのひとつに「親や親戚、田舎の友達にそのことがバレて、世間に顔向けができなくなる」ということがあるのだが、その「顔向けできない」とは一体どのような状況かと言うと、「嫁の貰い手がなくなる」ということがあると思う。しかし、結婚して旦那や子どもによけいな金をつかわせるより、このまま独身でもいいから娘にしっかり稼いでもらって、年取った我々の面倒をみてもらったほうが人生は得だと考える親が少なからずいて、その稼ぐ手段のひとつとしてAVがあったということなんじゃないか。

・若い年代はアダルトなコンテンツをインターネットから無料で入手するのが普通のことになっていて、金払ってまでアダルトビデオを買ったり借りたりするのは50代以上の中高年ばかり、となりつつある。なのでますますAV業界は不況になっていくというわけです。
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2012年09月06日

傍迷惑な人々(サーバー短篇集)

傍迷惑な人々: サーバー短編集 (光文社古典新訳文庫) [文庫] / ジェイムズ サーバー (著); James Thurber (原著); 芹澤 恵 (翻訳); 光文社 (刊)

・ドリフのコントを見ているかのような作品ばかり集まってます。

・計算の苦手なハドスンさんの奥さんが、買い物のお釣りをめぐって食料品店のハンスさんと攻防を繰り広げる「ウィルマ伯母さんの損得勘定」とか、

・探偵小説だと思って買ったつもりの本がシェイクスピアの戯曲「マクベス」だったので、無理やり犯人の推理を始めるというわけのわからない展開になる「マクベス殺人事件」とか、ご近所迷惑な人たちが多数登場します。
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2012年08月05日

「ラーメンと愛国」

ラーメンと愛国 (講談社現代新書) [新書] / 速水 健朗 (著); 講談社 (刊)

・喜多方ラーメンが世間に知られるようになるきっかけを作ったのが落語家の林家木久扇師匠であることを知った。タレント、文化人の力は侮れない。

観光化を考えていた喜多方市の観光協会は、会津若松に向かう観光バスが食事のために立ち寄る場所として喜多方ラーメンをアピールしようと考えた。そこで、観光協会が団体旅行客向けの食堂として推薦した「まこと食堂」のメニューには、少し風変わりなラーメンがあった。そこれが、平打ちの縮れた太麺という現在の喜多方ラーメンだったのだ。

喜多方が美しい蔵の街として知られ始めるとともに、このラーメンも綿入になっていく。きっかけは、テレビだった。1982年に、落語家でラーメン好きの林家木久蔵(現・木久扇)がテレビ番組で紹介したことが、喜多方ラーメンが知られるようになる最初の大きなきっかけだった。

(P169)

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2012年08月02日

マングローブ―テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実

マングローブ―テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実 [単行本] / 西岡 研介 (著); 講談社 (刊)

74年4月ごろ、革マル派は、自分たちが壊滅的な打撃を加えたことによって、中核派や革労協など対立セクトには、もはや自分たちを襲撃するための戦力も意思もないと判断。一方的に「勝利宣言」を出したのです。
だが、一方的に革マル派から「勝利宣言」を出されても、中核派などの対立セクトは当然のことながら猛反撃し、革マル派の犠牲者は増える。
しかし、革マル派からすれば「勝った」はずのわれわれが、「負けた」はずの対立セクトにやられるわけがない。そこで「勝利宣言」後の内ゲバについて、「戦闘能力のない輩(中核派などの対立セクト)の仕業であるわけがない」、だから「絶対に捕まることのない何者か」、つまりは「国家権力の犯行だ」と、超現実的な権力謀略論を展開していくのです。

(p147を抜粋)

こういった理解し難いことをやっている革マル派の関係者と、

国労の力を殺ぎ、国鉄改革を加速させるため、当時、「改革三人組」と呼ばれた松田昌士、葛西敬之、井手正敬の三氏ら「国鉄改革派」は、旧民社党系で労使協調路線を採っていた「鉄労」と手を組み、さらに民営化の前に大きく立ち塞がる国労の敵は味方とばかりに、当時から「革マル派幹部」といわれていた松崎率いる動労とも手を結んだ。

(p38を抜粋要約)

と、それ以来、JR東日本は革マル派と関係が断ち切れないでいて、

元運転士のJR東日本社員は、JR東労組以外の組合に所属する友人たちとの同窓会に参加しただけで、「組織破壊者」のレッテルを貼られた。同じJR東労組組合員から集団で吊るし上げられ、運転士の仕事から引きずりおろされた。

(p13)

 車掌の役割は、列車の運行と、乗客の安全を守ること。その車掌を何十人もの人間が取り囲んで威圧し、発車ベルの前に立ちはだかることまでしたのです。JR東労組の行為は明らかに異常。このような状況がまかり通るなら、列車の安全運行にも支障をきたしかねません。さらにJR東日本高崎支社がこうした業務妨害に対処せず、JR東労組の言いなりになっていたことも問題です。これが、JR東日本が「日頃から徹底している」という職場秩序や社員の管理の実態なのです。

(p63)

と、組合組織を維持するためには何でもやります、は勝手だがそのせいで乗客である私達の生命が危険に晒されていたのだなーと思うと、ちょっと背筋のあたりが冷やっとします。





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2012年02月19日

【変な給食】(幕内秀夫)




・日本全国にはどんな「変な給食」があるのかと興味を持ってページを繰っていたら56ページに秋田県由利本荘市の給食が取り上げられてました。

・「由利本庄市」って間違えるのやめてほしい。

・メニューは2008年9月20日のもので、

・シュガートースト
・ワンタンスープ
・ヨーグルト
・牛乳


  と、いった内容。

・書かれているコメントが、


 あきたこまちという立派なブランド米を生産している有数の米どころで、シュガートーストにワンタンスープなんて、信じられますか?

と、米作っているところで給食にたまたまパンを食ったことが批判されているようで、すったげ腹わりぐなりました。

・この本ではいたるところで米飯給食を推進しています。その理由として、

 @食物アレルギーは卵・牛乳・小麦の順に多いが、それはそれらの取りすぎが原因。パンやスパゲッティなど小麦が主原料の洋食系の食事から、ご飯を中心とした日本食に帰ると子供のアトピーは改善するし、離乳期から卵、牛乳、乳製品をゼロにしてご飯を多く食べるようにすると将来アトピーが起こりにくくなる。

 A長野県旧真田町では給食を米飯にすることによって荒れていた校区を「非行ゼロの校区」に再生させたし、学力も飛躍的に向上した。

 B市販されているパンのほとんどは完全なるお菓子で、食パンにさえ油と砂糖がふんだんに使われている。子供のころから食パンを食事にする習慣をつけるのはよくない。

と、いったようなことがあげられています。

・いかにも甘そうな菓子パンはともかくとして、グルメソフトとかも油と砂糖がたっぷりとはにわかに信じがたいところです。こんど袋に表示されている成分表示をチェックしておきます。

・また、取りすぎで小麦や牛乳、卵でアレルギーが起きるなら、米を食べすぎることによってアレルギーが起きることはないのか、起きないとしたらそれは何故なのか。そこのあたりが聞いてみたいところです。

  
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2012年02月10日

【恋する原発】(高橋源一郎)




・最近の高橋源一郎先生の作品は、大人が読んでいても食道を逆流してくる胃液を抑えるのに難儀するくらい激しい描写でAV業界が登場してくるので、一部の新堂冬樹作品と共に小中学生が手に取ったら「まんず、ちょっと待ででば!」と止めに入りたい。

・「メイキング☆5 恋するために生まれてきたの アイ・ウォズ・ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」で、小学4年生のさおりちゃんがおばちゃんに「一年生には、まず文字を教えないことにするの。だって、文字に気を取られて何も考えなくなってしまうから」とか「文字を覚える前には自分の意見があったのに、文字を覚えた後は、意見が無くなってしまうのよ!」という辺りが一番おもしろいところでした。

・全体読むのがめんどくさいと感じるむきには、途中に挿入されている「震災文学論」を読んで、「神様2011」(川上弘美)や「苦界浄土」(石牟礼道子)が読んでみたり、宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」を観たりすればよろしいかと思われます。
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2012年01月26日

ワシントンスクエア



・ざっくり言ってしまえば、父親は娘の結婚に猛反対している話

・「死んだ母さんは美人だったのに」と父親のスローパー医師に嘆かれる娘キャサリンは、顔立ちが地味、性格が内向的、そんなわけで社交ベタ。そんなキャサリンの目の前にイケメンな青年モリス・タウンゼントが現れ、やがてキャサリンとモリスは結婚の約束に至る

・「顔立ちも性格も地味な娘と結婚したがるのは私の財産目当てに決まっている。そんな奴にお前を嫁にやるわけにはいかない」と父親はキャサリンの結婚を頑固なほどに認めない。

・相手のモリスにも問題があって、他人から借金してたとか仕事もなくプーだとか、財産目当てであと訝しがられても仕方のないような生活ぶり。

・「結婚すればお父さんもきっと折れる」というモリスに対して、キャサリンはお父さん大好きっ娘だから、「お父さんに認めてもらえない結婚はイヤ」

・認めてもらいたくても、父親から「私は死んでも結婚は認めない。それでも結婚したいというのは私に早く死んでもらいたいというのと同じことだよ」と言われてはキャサリンに返す言葉はなし。

・さて、キャサリンとモリスは結婚して幸せな夫婦生活を送ることができるのでしょうか?
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2011年06月11日

元素図鑑

世界で一番美しい元素図鑑 [単行本] / セオドア・グレイ (著); 若林文高 (監修); ニック・マン (写真); 武井摩利 (翻訳); 創元社 (刊)

本荘のミライアに平積みされていました。

久しぶりに気合の入った本屋の平積みをみたような気がします。
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2011年01月26日

都はるみの歌い方は弘田三枝子の影響を受けている

創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史


・戦後の日本歌謡史における演歌の成り立ちを詳しく解説した一冊。

・最もトリビアだった部分を引用。

 畠山みどりが、パロディないしコミックとしてレコード歌謡に取り込んだ浪曲的な意匠を、「唸り」という歌唱技法においてさらに極端に推し進めたのが都はるみです。

 彼女は高校在学中に、畠山みどりの歌を歌ってコロムビア主催オーディションに合格しました。都はるみの「唸り節」に関して興味深いのは、その歌唱技法が直接的に浪曲に由来するものではないということです。彼女は幼少時から母親の期待を背負って歌を習っていたのですが、ある時浪曲師上がりの漫才師、タイヘイ夢路の舞台を見た母が、娘の歌に個性を与えるために唸りを強調するように命じたのが発端です。

 本人の回想によれば、練習しても母のイメージするところを理解できず、当時ポピュラー歌手として人気絶頂であった弘田三枝子の歌い方を模倣することで、あの唸りを身につけたといいます。例えば「子供ぢゃないの」での「今でもガムを買ってくれるから嫌い」の「嫌い」の部分での押しつぶしたような発声を想起してください。

 現在の意味での「演歌」の歌唱法の一つの頂点ともいえる都はるみの極端な「唸り節」が、戦後のアメリカ音楽受容のひとつの頂点として、小林信彦をして弘田三枝子の歌唱技法に由来していることは、きわめて驚くべき事実です。


(p95)



これは、タイヘイ夢路の「浪花春秋」ですが、これには都はるみの「唸り」に似たところはあまり感じません。

次に、弘田三枝子の「子供ぢゃないの」



「今でもガムを買ってくれるから嫌い」は1′58″のあたり。

これが、「アンコ椿は恋の花」の「アンコ便りは〜」や「好きになった人」の「さようなら さようなら」や「北の宿から」の「女ごころの未練でしょうかなど」の「唸り」に影響を与えていたというのは実に興味深いです。







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2010年11月18日

与謝野晶子の子供の名前

文学フシギ帖――日本の文学百年を読む (岩波新書) [新書] / 池内 紀 (著); 岩波書店 (刊)



晶子と世界の標準の項に書かれてある、与謝野晶子のエピソードがおもしろかったです。

 詩にとどまらない。生きるにあたっても、この人は「世界の標準」を自分の指針にしていた。わが子の誕生にあたっては無痛分娩を実践し、その体験をひろく女性たちに報告した。その子の命名には世におなじみの勝ち運や商運、あるいはエトになどにあやからず、アウギュスト、エレンヌといった。名前をつけた。また、天皇にちなむ年号を使わず西暦で通した。


アウギュスト、エレンヌなど今でも珍しい部類に入る名前なので、他の子供の名前を調べてみると、


【1878年12月7日与謝野晶子 10人子持ち】
http://blog.livedoor.jp/sadakun_d/archives/50023215.html

長男 光
次男 秀(しげる)
長女七瀬
次女八峰
三女佐保子
四女宇智子
三男アウギュスト
五女エレンヌ
四男 健
六女藤子


次女の八峰がちょっと珍しいかな、と。

この子供たちに大いなる期待を持っていたのかと思ったら


業なるといはば云うべき子は三人他はいかさまとならん


ずいぶんと冷めているかあちゃんでした。
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2010年04月21日

第7回「本屋大賞」




・初めて聞く名前の作家さんだ。

「本屋大賞」のサイトで受賞結果を見ると、『天地明察』が2位の『神様のカルテ』にほぼ100点の差をつけて断トツの1位になっているところを見ると、全国の書店員がかなり力を入れて推しているなと。

・ただ、過去の受賞作が全て映画などに映像化されていることから、今回の作品も既にそうなることが決まったかのような感じを受けてしまったので、そこらへんはちょっとな〜と思いました。

posted by しょーじ(の) at 18:53| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月16日

「おへそはなぜ一生消えないか」(武村政春)


おへそはなぜ一生消えないか―人体の謎を解く (新潮新書)

おへそはなぜ一生消えないか―人体の謎を解く (新潮新書)

  • 作者: 武村 政春
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/02
  • メディア: 新書




「食べる口としゃべる口はなぜ別ではないのか」(第一章)とか「おへそはなぜ一生消えないか」(第五章)など、この本を読むまでは何の疑問も感じていなかった人体の謎について書かれていてたいへんおもしろかったです。

そうだよな〜。へそってある意味傷跡だから、時間が経ったらキレイに消えてもおかしくないよな〜。
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2010年04月06日

「告白」(湊かなえ)


告白

告白

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2008/08/05
  • メディア: 単行本




@2009年の本屋大賞受賞作品ということで期待して読んだしまったので少し拍子抜けした。「贖罪」が70点だとすれば、こちらは60点くらいだな。

A女教師が自分の娘はこのクラスの誰かに殺されたのだと終業式当日に犯人AとBを告発して復習するのだが、それに対してクラスの生徒が親や警察にそのことを告げるとか相談するとかしないのが不思議。復習されることになったAとBにしても即座に医者にいって診察をうけるとかしないのは何故なんだと、小一時間ほど問うてみたい心境になった。
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2010年02月28日

「限界集落温泉」(鈴木みそ)


限界集落温泉 1巻 (BEAM COMIX)

限界集落温泉 1巻 (BEAM COMIX)

  • 作者: 鈴木みそ
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2010/02/25
  • メディア: コミック




・twitterのTLで紹介されてたので、「限界集落にある温泉ってウチのことですか?」と、amazonにて購入。

・舞台は伊豆の山奥にある潰れかけの温泉宿。奥さんに先立たれた宿の主人はどうやら小説家らしい。

・そこの宿を売ろうと画策する旅館組合の組合長が川端康成風情。

・東京から逃げ出してきたゲームクリエイターの溝田が宿のために、いろいろとアイディアを出していくが、ネットアイドルの「あゆぽん」と実は「あゆぽん」のファンだった役場のコージくんがいなければ話が成り立たなかったような。

・「温泉場は残念ながら命を捨てる場所として使われることもままあります。しかし、いにしえよりいで湯は命をはぐくむという意味があります。捨てるのではなく拾う。傷ついたら傷が癒えるまで休めばいいんです」(p96〜97) ってところに付箋をつけた。

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2010年02月03日

「戦後落語史」(吉川潮)


戦後落語史 (新潮新書)

戦後落語史 (新潮新書)

  • 作者: 吉川 潮
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/12
  • メディア: 新書




@落語家って見た目よりも老けて見える人が多いし早死の人が多いという印象がある。子どもの頃「笑点」に出ていた三遊亭小円遊は六十歳前後の噺家さんだと思っていたのが、亡くなった時の年齢が43歳で今の私より五歳も若い。

A戦後の落語史をひとことでいうと、「真打ち」をどうするかでもめまくりました、ってことになると思われ。

102ページから引用
 試験から五日たって、不合格の六人のもとへ協会事務局から通知があった。書面には合格者の名前だけ書いてあったという。なんという情のない仕打ちか。その後協会から、不合格の者は三か月後に追試をすると発表される。
 業界内でさまざまな噂が流れた。中で一番信憑性があったのは、「今回の試験は最初から何人か落とすつもりだった」「合否には情実がからんでいて、一部の理事の思惑があった」という説である。つまり、前回十人全員を合格させてマスコミに「甘い」と批判されたことを気にして、今回は厳しいところを見せるため、最初から厳しいところを見せるつもりでいた。その結果、合格したのは理事たちが不合格にできない会長の弟子(小里ん)と副会長の弟子(花蝶)。三平一門は二人落ちたが一番上の源平を合格させてバランスを取った。正雀は抜擢だから合格させるのが当たり前。
 落ちたのは故三平の弟子二人と故彦六の弟子で、師匠がいないから文句もでない。それに談志と志ん朝が審査に同席していたとしたら、他の理事たちは二人の目前で弟子たちを不合格と判定できたか。つまり、欠席裁判に近い合否判定とも言える。


B笑点レギュラーの小遊三師匠とか、たい平師匠って見た目よりもすんごい実力派の噺家さんだったんだな。
posted by しょーじ(の) at 22:19| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月28日

「いい日、旅打ち。」(須田鷹雄)


いい日、旅打ち。 - 公営ギャンブル行脚の文化史 (中公新書ラクレ)

いい日、旅打ち。 - 公営ギャンブル行脚の文化史 (中公新書ラクレ)

  • 作者: 須田 鷹雄
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2009/11/11
  • メディア: 新書




@第1章「旅打ちの歴史」で昭和5年に書かれた荒木千一氏の「福島競馬行」という原稿が紹介されている。
 車内の様子も細かく描かれていて面白い。浦和を過ぎたあたりではボーイさんが登場し、福島駅から競馬場までの自動車と、帰途の土産の注文を受ける。
 さらに列車が進む頃には食堂車は「恐ろしい盛況」で席が空くのを待つ客も多数。これは食堂車の三分の一を潰して麻雀卓を据えたためでもあり、菊池寛氏はこの麻雀卓の常連だったようだ。
 その他の車内は「明日の戦いの噂で持ちきり」であり、検討に花が咲いていたようだが、テンションが上がりすぎ、酒に酔った客が事故を起こしたとの記述もある。雀の宮を過ぎたあたりで列車から転落して(当時の客車に密閉式のドアなどない)足を切断する事故になったそうだ。ここまでくると、笑えないエピソードになってしまう。我々もテンションオーバーには注意したいものだ。


A第6章「旅打ちの実践その2〜郷愁主眼編」で飯塚オートの宮本隆与アナウンサーが紹介されているのがファンとしては嬉しい限り。
 なんだか中央食堂の話だけを延々と書いてしまったので、最後に飯塚オートの現代の名物について書き添えておこう。
 その名物は宮本隆与氏の場内実況である。
 「針三秒前、二秒前、一秒前、各車一斉にスタート、ギャオ!」
 という決まり文句の「ギャオ!」が名物なのだが、これは「Gear On=ギヤ・オン」の音便化が進んだものである。
 オートレースファンなら誰でも知っているとさえ言える「ギャオ」、どのみちスピーカー経由とはいえ、どうせならせっかくの名物として飯塚本場で聞くのも一興ではないだろうか。

posted by しょーじ(の) at 21:54| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月04日

身内でなんと呼び合うか


日本語教のすすめ (新潮新書)

日本語教のすすめ (新潮新書)

  • 作者: 鈴木 孝夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/10
  • メディア: 新書




この本の、「第四章 日本語に人称代名詞は存在しない 一 身内の呼び方の方程式」がおもしろかった。



家族内では、

・相手が自分より目上の親族のときは親族用語で呼ぶ⇒お父さん、おばさん、兄さん など

・相手が自分より目下の親族のときは名前で呼ぶ。しかし、年の近い姉妹の場合、妹が姉を名前で呼ぶことが近年増えてきている。

・自分より目上の親族に人称代名詞は使えない⇒あなた、君、お前 など


相手に対して自分を指すとき、

・自分より目上の相手に親族用語で自分を表すことはできない。目上の者は目下と話すとき、自分を相手から見た親族用語で表すことができる。

・相手が自分より年下のときは名前で自分のことをいうことができない。相手が自分より年上のときはできる。これは男の場合は年が小さいうちに限られるが女の場合はかなりの年の人にもみられる。
・これでいくと「春日です!」は幼稚または女っぽい、ということになるのか?

・一人称代名詞と考えられている「私、ぼく、オレ」などは家族内に追いて年上、年下関係なく使える。ただしどの言葉を使うかは状況による。


迷子になっている子供に声をかけるとき

・大人が自分のことを、相手にとって自分が親族では何にあたるかを考えてそれにふさわしい用語で「おじさん、おばさん」と自称する(虚構的用法)

・相手の女の子を「おねえちゃん」と呼ぶのは、本来は自分を中心とするべき自己中心語の原点を自分ではなく他者に移して使っているからと考えることができる。

・男の子に「ボク、どうしたの?」と声をかけることができるのに、女の子に「ワタシ、どうしたの?」と声をかけることができないのはなぜんなんだろうな?



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2009年10月02日

「贖罪」(湊かなえ)


贖罪 (ミステリ・フロンティア)

贖罪 (ミステリ・フロンティア)

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/06/11
  • メディア: 単行本




@小学生の女の子が学校の更衣室で殺されるという事件があり、その犯人を見たはずなのに、一緒に遊んでいた4人の女の子たちは顔も特徴も思い出せない。殺された女の子の母親から4人に発せられた言葉が、それぞれの人生を狂わせてしまう連作なミステリ。

A「フランス人形」「PTA臨時総会」「くまの兄妹」「とつきとおか」「償い」「終章」からなり、それぞれに登場する一見すると普通に見える男性の異常さ、変態さ、鬼畜さがすさまじい。特に「くまの兄妹」に登場する晶子の兄がひどすぎる。

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2009年08月07日

麻薬とは何か〜「禁断の果実」五千年史


麻薬とは何か―「禁断の果実」五千年史 (新潮選書)

麻薬とは何か―「禁断の果実」五千年史 (新潮選書)

  • 作者: 佐藤 哲彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/05
  • メディア: 単行本





・昨日今日のタイミングでこれを読んでる私ってある意味すごいな
 つ【酒井法子容疑者に逮捕状 覚せい剤所持容疑】

・目次は、
  
 
序 章 麻薬 精神に作用するクスリとは?
 第一章 麻薬・文明・万能薬 薬物の原初的使用とその伝播
 第二章 コカインとヘロイン 十九世紀欧州の発明
 第三章 ドラッグのアメリカ 理想の国家と麻薬の犯罪化
 第四章 覚せい剤と日本   もう一つの戦後史
 第五章 LSDとヒッピー  エクスタシーとレイヴ
 終 章 麻薬と人類の未来



・大麻や覚せい剤の所持や使用が罪なのはずいぶん昔からなのか、江戸時代に大麻で捕まった罪人っていないのか、というあたりを知りたいので、第四章「覚せい剤と日本」を中心に読んでみました。

・日本における覚せい剤は、近代日本の薬学の基礎を築いた長井長義が和漢薬の材料である麻黄から気管支拡張剤としてエフェドリンを抽出したのと同時に「麻黄研究物質第三十三号」と名付けられた物質を抽出したことに始まる。フェニルイソプロピルメチルアミンまたはフェニルメチルアミノプロパンと称されるこの物質は抽出から50年あまり後、1940年代にヒロポン=覚せい剤として日の目を見ることになる。

・1940年代当時の新聞広告には「資生堂歯磨」「イチヂク浣腸」と並んで「眠気と倦怠除去にヒロポン」の広告が載っている。覚せい剤の新聞広告なんて今じゃ全く考えられませんね。

・ヒロポン名で覚せい剤(メタンフェタミン)を製造していたのは大日本製薬。他にもホスピタン(参天製薬)、ネオパンプロン(小野薬品工業)、ネオアゴチン(富山化学工業)など合わせて23社にのぼる。

・戦時中軍部に備蓄されていたメタンフェタミンなどの薬品は、終戦後兵士が持ち帰ることで民間で使用されるとともに市中に放出された。

・昭和24,5年頃には、ヒロポンなど覚せい剤の製造自粛なんてとんでもないという認識がほとんどで現在のように使用者が取り締まられたり逮捕されたりと言った状況は想像できなかった。

「ヒロポン問題につきましてお伺いを申上げます。厚生大臣は、厚生次官の名においてヒロポン並びに各製剤の製造業者に対しました、製造をしないように、製造を手控えするように言っておりますが、勤労大衆並びに資本家はこれがために非常に苦しんでおる。また医薬上から見ましても、薬学上から見ましても、ヒロポンは覚醒剤として医薬品中の優秀な医薬品であります。この薬品がなければ病気の治療上非常な不便を来たすのでありますからして、厚生大臣におかれましては適正なるところの方針によってヒロポンの販売を許し、又医療政策上これが増産を図るのが至当であると思うのであります」(1949(昭和24)年第六回参議院本会議)


 最近は大分下火になったが、ヒロポン等覚醒アミン中毒は、昨今の話題の一つで、国会の問題にまでなった。この薬のお得意先は、流行作家、俳優、歌手等からパンパン、街のあんちゃん、浮浪児という三面記事の花形なので、過大に書き立てられる傾向はあるが、社会の各層に相当広く、ゆきわたっていることは事実らしい。先日ある会合で列席の記者諸君にきいてみると、ほとんど全部が愛用しているのには驚かされた。もちろんこれは嗜癖という程度でなく、上手に利用して、仕事の能率を上げているのである。(「ヒロポンはどうなる」『日本医師会雑誌』1950(昭和25)年)


・劇薬扱いや製造自粛によって、ヒロポンのヤミ市場での価格が上昇し密売が横行するようになる。1949年10月の市販価格が81円50銭に対して、ヤミ市場では120円。翌年には150円に上昇。ヤミ市場からの購入者は劇薬指定によって年齢制限がかけられた青少年たち。この時代、問題の中心は密売者に代表される大人たちである。

・覚せい剤取締法は1951(昭和26)年に両院で可決。同年7月30日に施行。議論のきっかけとなったのが、集団強姦事件で検挙された青少年たちが富山化学工業のネオアゴチンを使用していたことが明るみになった富山化学事件に端を発す。

・これで覚せい剤使用者がすぐに逮捕され罰せられるようになったわけではない。当時の警視総監は、中毒者が犯罪を犯した場合は検挙するが、中毒だけでは犯罪とするわけにはいかず、保護して治療すべきだと論じている。

・ヒロポンなどの覚せい剤は、それが犯罪を引き起こすと考えられたから取り締まられただけでなく、共産主義勢力が日本を侵略する資金稼ぎに利用されているものであるとされたがために大きく問題とされた。

・眠気覚まし、疲労回復の薬品として使用されていたヒロポンは1970年代の第二次覚せい剤流行期には性行為時に使用する例が増えている。このころにはヒロポン⇒シャブという呼び名が一般的になっている。

 
しかしながらそもそも覚せい剤を必要として、それを使用してきたのは日本であった。当初から覚せい剤は日本が諸外国、とくに欧米と対等に渡り合うために、開発され販売されたものであったといっていいだろう。近代化の過程で発見され、近代戦に臨む過程で発売され、その戦時下で用いられたという特徴をもっているからである。メタンフェタミンの発売で先行したドイツは、第二次世界大戦中にすでにその副作用を問題として規制をしたが、日本はそれには倣わず、むしろ使用を拡大させた。それは総力戦体制で欧米と渡り合うために、まるで国として眠気を振り払い、集中力を発揮する必要があったかのようでもある。そして敗戦後、日本は覚せい剤問題を抱えるようになって、皮肉なことにその意味ではようやく、欧米並みになったともいえるのである。(p176)
posted by しょーじ(の) at 20:36| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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